複雑性とは?


 
 従来の科学では,全体を構成する単純化された個々の要素について決定論的に理解できれば,系全体はそれら要素の集合体として把握できると考えられていました.ところが,構成要素の個性だけからは予測できない多種多様な特性が自己組織的に発現したり,構成要素内のほんの些細な出来事が系全体に及ぶ程の大きな変動に発展する可能性があることがわかってきました.このような性質を複雑性と呼びます.複雑性を示す系は,一見しただけではランダムに無秩序な振る舞いをしているように思えますが,自然の摂理としか呼びようのない驚嘆に価する法則性を備えています.
 複雑性の科学とは,複雑なものを複雑なまま受け入れ,その中にある普遍的な特徴を捉えようとする新しい学問であり,従来の科学の枠を超えた21世紀型の科学です.この複雑性を示す代表的なものとして,固体,液体,気体に次ぐ物質の第4番目の状態,即ちプラズマがあります.

プラズマとは?


 
 私たちの目に見える物質は,宇宙ではほとんどがプラズマ状態です.例えば,太陽系では,太陽が巨大なプラズマの塊で99%の質量を占めていて,残りの惑星をすべて足しても1%にしかなりません.それでは,プラズマとはいったい何でしょうか?
 物質は温度によって固体,液体,気体という3つの異なる状態をとることは良く知られています.水は0℃以下では固体である氷,100℃までは液体である水,100℃を超えると気体である水蒸気になります.さらに温度を上げて10000℃を超えると,水を構成する水素原子や酸素原子がバラバラになり,それぞれの原子から電子が剥ぎ取られ,プラスの電荷を持つ水素や酸素の原子核とマイナスの電荷を持つ電子が高速で飛び交う状態になります.これがプラズマ状態です.つまり,プラズマとは物質が超高温になったときになる第4番目の状態のことです.プラズマは,普通の物質とは違って非常に複雑な振る舞いをします.

なぜシミュレーション?


 
 このような複雑性が支配する研究領域は,従来の研究手法では解明することができず,未踏の研究領域として残されています.この領域を踏破するための有力な研究手段が,実験,理論に次ぐ第3番目の科学探究の手法であるシミュレーションなのです.
 近年のハードウェアおよびソフトウェア技術の劇的な進歩により,コンピュータの計算能力が飛躍的に向上し,従来では考えられなかった大規模かつ高精度なシミュレーションが可能となりました.このため,シミュレーション科学も大きく発展し,科学の研究手段として確固たる地位を築き,必要不可欠な物になっています.
 
 私たちは,最新鋭のスーパーコンピュータと先進的なシミュレーション技術を駆使することにより,複雑性を科学しています.