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複雑性科学の理論的研究

複雑性科学理論研究室では、プラズマを主な対象に自然界に潜む複雑性の科学を様々な観点から研究しています。

ITER

磁場閉じ込め核融合

人類は既に莫大な量のエネルギーを消費していますが,人口の増加と文明の発展に伴い,更なるエネルギーを急激に消費しようとしています.しかし,エネルギーを得るための活動は,二酸化炭素排出による地球の温暖化を招き,過酷状況下での化石燃料採掘は,一度事故が起こると自然環境破壊が広範囲に及びます.また,発電時には二酸化炭素を排出しない原子力発電も,重大事故発生の懸念があります.そこで,強力なコイルを用いてドーナツ状の磁場を作り、その中に高温プラズマを閉じ込めて、太陽が輝いているエネルギー源である核融合反応を地上で実現し,無尽蔵のエネルギー源とすることでエネルギー問題を解決しようとしています.

LHD turbulence simulation

高温プラズマ乱流 

磁場閉じ込め核融合プラズマのような高温なプラズマでは、密度や温度のわずかな揺らぎが原因で、その揺らぎの大きさ自体を増幅させてしまう様々な不安定性が存在します。そして、その不安定性が要因となって、大小様々な大きさの渦が形成され、乱流状態に陥ります。この乱流の物理を理解することは、核融合の実現に不可欠であるだけでなく、非常に広い時空間スケールに跨がる物理現象の宝庫とも言え、世界中の研究者の興味を惹きつけています。一方で、この乱流により、プラズマがどのように、どれくらい外部へ漏れ出していくかを正確に評価することは、核融合開発の進展にも直結する重要課題です。我々は、スーパーコンピュータを用いた大規模シミュレーションによって、この課題に挑んでいます。

Turbulent transport model

プラズマ乱流輸送の物理モデル構築 

乱流により、高温プラズマは外部へと漏れ出します。対象にもよりますが、近年のスーパーコンピュータの演算能力の向上に伴って、その様子は乱流シミュレーションで正確に追うことができるようになっています。しかし、この数値シミュレーションに必要となる計算機規模は、富岳や不老のようなスーパーコンピュータの大半のシステムを数百時間、利用してようやく達成されるほど巨大な計算量になります。そのため、乱流輸送の定量的な予測を現実的な時間で達成するためには、何かしらの簡約化モデルが必要になります。我々は、これまでに蓄積した乱流シミュレーションの膨大なデータを元に、乱流輸送を再現し得る物理モデルを構築しています。 

Plasma Simulator

高性能計算科学

計算機による数値シミュレーションは、複雑なプラズマの振る舞いを理解するためには必須の研究手法です。しかし、いくらスーパーコンピュータのような大型計算機であっても、その性能には限界があるため、私たちは、その時代に応じた計算機の性能を最大限に発揮できるよう、シミュレーション・プログラムをコーディングしなければいけません。そのためには、コンピュータのアーキテクチャーや特性、最新のコーディング技術等を把握し、さらには独自に新しい技術を開発していく必要があります。我々は、国内外のスーパーコンピュータを使って、日々、この課題に取り組んでいます。

Data science

データ科学 

第一原理プラズマシミュレーションからは膨大なデータが得られます。従来は、そこから得られるプラズマの挙動を例えば「輸送係数」のような簡単な物理量を算出することで理解しようとしてきました。しかし、大規模なデータには、まだまだ拾い切れていない多くの情報が潜んでいます。近年、機械学習や深層学習、人工知能といったデータサイエンスの観点からの研究が盛んですが、大規模シミュレーション・データに対しても、このデータ科学からの新しい解析に挑んでいます。これまでの解析方法では捉え切れていなかった物理機構や、プラズマの複雑な挙動を司る法則を、データ科学からのアプローチで解明してきます。

Simulation techniques

シミュレーション手法開発 

物理シミュレーションには様々な数値技法やアルゴリズムが存在し、それぞれに長所と短所があります。同時に、物理問題に応じても、向き・不向きがあり、 対象に応じてシミュレーション手法を適材適所で選択しプログラムを開発していかなければいけません。さらには、従来の手法では解析に限界があった物理問題に対して、新しい手法を随時開発し、我々の研究範囲を拡大させていきます。