名古屋大学大学院理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻(素粒子宇宙物理系)


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2022/5/26/ 電気対流実験でΣE研のロゴの形に乱流を駆動することに成功.白く見える領域は、乱流状態のため光を反射し白く浮き上がって見えます。4㎜ x 4mmのロゴです。周りに見える緑色の粒々は、追跡用蛍光粒子です。

ΣE研とは?

プラズマを使った実験物理の研究室です!
現代物理学は、「物質の基本粒子や宇宙の支配する根本原理を追求する科学」と 「シンプルな法則にしたがうものが多数集まった結果として複雑な現象を引き起こす複雑性の科学」に分けて考えると ΣE研では、後者を対象にした実験物理に取り組んでいます。 荷電粒子の集合体であるプラズマは、個々の粒子の運動を記述する方程式がわかっていながら、宇宙で観測される様々な構造を形成するなど、 複雑性を科学するには最適な対象であり、天文学や地球科学などの広い自然科学の研究分野に関連しています。 ΣE研では、2つのキーワードで実験物理に取り組んでいます。

〇非線形現象の素過程の理解とその制御への挑戦
・乱流に代表される非線形現象を完全に理科することは、ある意味「永遠のテーマ」ですが、部分的には理解が進んでいます。 実験検証から外部からの制御を通じて、非線形現象を利用することに挑戦しています。

〇位相空間(速度分布関数)ダイナミクス
・実験室プラズマは、非平衡系の典型例で1億度/mを定常に維持することが可能です。 この温度勾配は、局所熱平衡の仮定は大変怪しくなります。 つまり、速度分布関数がMaxwell分布を仮定できない状態が観測されます。 このようなシステムは、位相空間の構造形成や緩和現象などその多彩なダイナミクスが重要となります。 近年のプラズマ実験は、この位相空間構造の計測技術が進展しており、そのダイナミクスの研究に挑戦しています。

核融合科学研究所で研究を行っています!
研究室は、核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の中にあります。 核融合科学研究所は、安全で環境に優しい次世代エネルギーの実現をめざして、核融合発電に関連する研究を行っている大学共同利用機関の研究所です。 世界最大級の磁場閉じ込め核融合装置(LHD)をはじめとする大小さまざまな実験装置で研究を行っています。 ΣE研では、大型ヘリカル装置(LHD)、直線型高密度発生装置(Hyper-I)、回転乱流実験装置(RHD)、大型負イオン源(NIFS-RNIS)などの実験装置を用いた実験をベースとして、 プラズマの物理的理解を深める研究を通じて、核融合研究開発への貢献をはじめ、宇宙プラズマなど関連する研究分野への貢献も目指しています。 名古屋大学のキャンパスから少し離れていますが、実験研究の場としては、抜群の環境になっています。

プラズマとは?

宇宙空間内のほとんどの物質は,原子がイオンと電子に解離した「プラズマ」という,固体,液体,気体に次ぐ,「第4 の状態」で存在しています.温度の高い荷電粒子の集合体ではあるが全体としては電気的に中性を保っています.このためプラズマは,気体としての性質を残しつつも個々の粒子は電磁力の支配下にあり,離れた粒子間でも互いに影響を及ぼし合います.このような性質のためにプラズマは,その振る舞いが一気に複雑化し,多くの波や不安定性が励起される,自由度の大きい非線形媒質としての様相を呈します.ΣE研は,この「非線形現象の宝庫」と言われるプラズマを遠い宇宙に求めるのではなく“手の届く”実験室に実現し,能動的にプラズマに働きかけることによりその本質を探ろうという研究室です.